- 新患の6割以上がホームページを見てから来院してくる
- Googleの市場占有率は事実上9割を超えている
- SNSは構造的な問題で病気の情報がほとんどシェアされない
- Googleのおかげで過疎地の山奥に店舗を構えても全国から患者はやってくる
- 総合病院はクリニック向けに情報発信すべし
「病院やクリニックは事実上Googleに出店しているに等しい」。このようなニュアンスの言葉を聞いたことはないでしょうか?
コンサルティング会社主催の勉強会や集患セミナー、あるいは最近出版されているクリニック関連の書籍で必ずと言っていいほどこの手の話が出てきますが、これは全くの事実で、特に新患はGoogleやYahooであなたの病院やクリニックの情報を調べてから来院してきます。
ホームページの出来が悪ければなんとなく不安になって来院をためらい、口コミが悪ければ二の足を踏みます。
しかし、この事(Googleの支配)を受け入れていない医療関係者はまだまだたくさんいると思いますので詳しく解説していきます。
新患の6割以上がホームページを見てから来院してくる


公的なデータが存在しないので説得力に欠けてしまいますが、私のクライアント(病院とクリニック)での最新のアンケート調査では、来院前に当該の病院とクリニックのホームページを見て「ここに行こう」と決めて来院した人の割合は78.3%でした。
2院でのデータだと統計上の信頼度が低いので、データを探したところ以下のものが見つかりました。
引用元:病院選び・医者選びに関する調査2019|メディケア生命
メディケア生命の調査によれば病院のホームページを参考に病院を選んでいる人の割合は「2014年39.8%→2019年55.8%」と急上昇していることが分かります。
手前味噌で大変恐縮ですが、うち(集患倶楽部)では集患を成功させるための労力の9割をホームページ制作に注ぎ込みますので、集患倶楽部のクライアントのホームページが優秀(現時点で打率75.3%)なのは当然だと思っていますし、私個人的には全然満足していません。
「ホームページにたどりついてくれれば一発で仕留めてやる」という気概で作り込んでいますので。
集患倶楽部のクライアントの事例(75.3%)は極端だとしても、メディケア生命が5年後に同じ調査をしたらデータはどうなるでしょうかね。ここ5年で16%の伸び率ですので、勢いが鈍化したとしてもホームページを参考にして医療機関を選ぶ人の割合は65%くらいに達しても違和感はなさそうです。
なお、ホームページを見ないで一切見ないで新しく通うクリニックを決める人は、
- 家族や友人からの口コミ
- SNSでの口コミ
- 近所に引っ越してきた
- 以前から存在を知っていた
このあたりが考えられますが、ヒト・モノ・カネが限られた中で集患施策を考えた場合、ホームページの充実が非常に重要度の高い施策と言わざるを得ません。
それに、非ネット戦略は集患のロジックが確立されていないのでそもそも打ち手がほとんどないんですよね。立地とか丁寧に診察する、みたいな話にどうしてもなってしまいますから。
食べログやAmazonを見ない人は少ない
逆の立場になって考えてみましょう。
例えば知らない町で大切な人と食事をすることになったとします。どうやってお店を決めるでしょうか。駅中でフリーペーパーを探してページをめくるでしょうか。街中をぐるぐると歩いて良さそうな所を探すでしょうか。
きっとあなたはそんなことしませんよね。スマホに「〇〇駅 ディナー おすすめ」とか「〇〇市 レストラン 夜景」などと検索窓に打って調べ、だいたいの場合食べログやぐるなびにたどりついて口コミを読んでからお店を決めることになると思います。
家で使う家電製品が壊れたとします。近くに家電量販店があれば足を運ぶと思いますが店内で商品を眺めた後に何をしますか?
私なら価格を調べるためにカカクコム(価格.com)で最安値を調べ、そのままカカクコム内で口コミやレビューを調べ、その後にAmazonの口コミを覗きにいってしまいます。価格や口コミに納得すればそのまま家電量販店で買うでしょうし、他が安ければ他で買います。
あなたの髪の毛が抜けてきたら
「食べ物や家電の消費行動では参考にならない!」という反論が聞こえてきそうなので、「薄毛になる」というシチュエーションで考えてみましょう。
男性であっても女性であっても髪の毛が薄くなるのは人生を揺るがす大事件です。もしあなたが薄毛になった場合どういう行動をとるでしょうか。
間違っても知り合いに「髪の毛薄くなったんだけどどこかおすすめ知らない?」なんて聞けませんよね。知り合いどころか家族にだって聞けないと思います。
病気全般に言えることですが、程度の差はあれ本人にとって病気はコンプレックスです。コンプレックスは人に相談したくないので自分でこっそり調べますよね。昔であれば書籍などで調べていたと思いますが今は事実上ネット検索ほぼ一択です。
※厳密にいうとAGAは病気ではありません
書籍の弱点は情報が古いこと
関連する書籍を調べるために最初からAmazonの検索窓に「薄毛」などとキーワードを打ち込む人ももちろんいると思いますが、書籍には致命的な弱点があります。それは最新の情報を得られないことです。
Amazonで書籍を調べたときに書籍の発売日がいつなのか気になって必ず確認しますよね。薄毛の書籍を探していて最新の書籍が2年以上前のものしかなかったら、検索エンジン(GoogleやYahoo)に戻って調べなおすわけです。
ネットを一度も経由しないであなたの病院やクリニックに来院する人の数は、減ることはあっても増えることはありません。病院にくるのは高齢者が中心ですが団塊の世代はネットを使える人が大半です。
団塊の世代は2025年には高齢期(75歳以上)に入ってくるので、あなたの病院やクリニックに来る前に団塊の世代の人たちはネットで調べてから来院します。そのネットを支配しているのがGoogleなのです。
Googleの市場占有率は事実上9割を超えている


Yahooはインターネット創成期の1995年にカリフォルニア(アメリカ)で生まれたベンチャー企業で、検索エンジンを広めた大きな功績がある会社です。しかし、Googleとの競争に敗れて2017年に身売りして解体いたしました。
現在日本に残っているYahooはブランド名こそYahooであるものの、親会社はソフトバンクでアメリカにかつて存在したYahooとは別企業です。自社で検索エンジンを開発しておらずGoogleと契約してGoogleの検索エンジンをほぼそのまま搭載しています。
従ってGoogleとYahooの検索結果はほぼ99%一致しているのでYahoo=Googleなのです。
さて、ここで日本国内における2020年現在の検索エンジンのシェア率を見てまいりましょう。
Googleがダントツトップで、2位のYahooと併せると実に93%ものシェアを握っていることが分かります。これがGoogleの支配です。
「でもSNS全盛って言われているのでSNSを入れるとGoogleの支配とは言えないのでは?」
という疑問が浮かんでおられると思うので続けてSNSを解説します。
SNSは構造的な問題で病気の情報がほとんどシェアされない
これは論より証拠です。 4大SNS検索という便利なツールがあるので、これを使ってご自身の健康の悩みを実際に調べてみて下さい。
どうでしょうか。うまいこと調べられたでしょうか。
「SNSでの情報検索に満足した。これで病気のことは調べられる!」
という方は今すぐこの記事を閉じていただいて結構です。参りました。私が間違っていてあなたの勝ちを認めます。
でも、私の主張をひっくり返せる人はたぶん一人もいないですよね。なぜならSNSは情報をシェアするために作られたツールなので、シェアされることがほぼありえない病気の情報を調べることに不向きだからです。
- 私は〇〇で水虫が治りました
- 俺のAGA対策がバッリチはまって髪が生えてきたなう
- 口が臭かったけど〇〇デンタルクリニックで治りました♪
などとSNSでシェアする人がいるでしょうか。いませんよね。
SNSというのはシェアを前提に成り立っているツールなので、シェアされることの少ない病気のことを調べる事はそもそもできっこないのです。
「若い世代はSNSを使って調べている」という話を良く聞くようになりましたが、彼ら彼女らは病気の事をSNSで調べているわけではありません。病気のことは検索エンジンで調べています。SNSに病気の情報は落ちていないので調べられっこないですからね。
SNSが集患に使えないという意味ではありません。SNSを使った集患については非常に重要なので別途記事にいたします。
YouTubeはGoogleのサ-ビス
「YouTubeがあるじゃないか。俺はYouTubeで調べること多いぞ。YouTubeはSNSだろ!」
という声が少し聞こえてきたので解説を加えておきますが、YouTubeはGoogleのサービスです。検索エンジンとSNSを全て加えて何かを調べようとしたときにYouTubeまで入れてしまうとGoogleのシェアはむしろもっとあがるかも知れません。
もうどうやっても病院やクリニックはGoogleから逃れることができないので、諦めて下さい。日本がアメリカから離れることができないのと一緒です。アメリカと離れてどこと手を組むのでしょうか。中国でしょうか。ロシアでしょうか。
「俺はBing(マイクロソフトの検索エンジン)で生きていくんだ」「腕さえあれば患者は集まるはずなのでホームページなどなくても集患してみせるぜ!」という選択をするのは自由ですが、「が、がんばってください、、、」としか言えません。
Googleのおかげで過疎地の山奥に店舗を構えても全国から患者はやってくる


Appleがiphoneを発売する前くらいまで、つまりスマホが浸透する前までは病院やクリニックにおける集患は立地が非常に大きな要素を占めていました。
パソコンは移動中に使えないので、行動範囲の目に入る場所に開業している病院やクリニック、あるいは駅看板は非常に重要だったと思います。
でも、例えば私が契約していたクライアント(病院やクリニック)は立地が悪いとこばかりでしたし、現在のクライアントも「良くこんなところに開業する気になったなあ」と驚くような場所にあります。
でも、そんなクライアンに対しても、Web施策が8割くらい完了した段階で「看板広告はお金の無駄なので全て解約して大丈夫です。責任もちますので。」とアドバイスしています。
例え雪国の山奥にあるクリニックであろうと本当に困っている患者さんはやってきてくれます。都心のド真ん中の最激戦区でも一緒です。四方八方ライバルに囲まれていても関係ないです。
なぜなら患者は事前にネット(検索エンジン)で調べているので、しっかりとしたWeb施策を実行していれば立地は関係ありません。
もちろん立地が良いに越したことはないのですが、固定費が高く利益が上がりませんよね。駅前のクリニックほど倒産してしまうのはむしろ立地(固定費の高さ)が足を引っ張っている側面は否めません。
総合病院はクリニック向けに情報発信すべし


大きな総合病院の集患ルートはクリニックや歯科医院と大きく違います。地域医療ネットワークを壊さないよう原則としてクリニックからの紹介状が必要だと思いますので、総合病院にとっての“一義的なお客様”は地域内のクリニックになります。
別記事で詳しく解説していきますが、総合病院のホームページで発信すべきなのはクリニックが困っている情報です。つまり最新の医学情報です。
総合病院はクリニックである程度検査した患者がやってくるので「後医は名医」という言葉があるとおり、疾病を特定するのはそれほど難しくありません。
でも、クリニックは最初に患者を診るところなので原因不明の患者が来た場合に「安静にしましょう」「ストレスが原因では?」と言わざるを得ないケースが多く患者の信頼を獲得しにくいです。
医師一人で回しているクリニックは勉強会などに参加する機会もなかなか作れないので、座学での知識が増えていきません。
総合病院の関係者にはここでピンときてほしいのですが、これ(最新の医学情報)がクリニックのニーズです。勉強会に参加したり出身大学との共同研究などで得た知見をクリニック向けに情報発信すればいいのです。
そのような貴重な情報は地元のクリニックだけでなく全国のクリニックがGoogleで情報を見つけて、総合病院のホームページを閲覧しにきます。
この話を続けると長くなっていますので続きはこちらの記事を読んでいただくとして、とにかく、総合病院であってもGoogleに開業しているという意識を持つことは非常に重要と言えるのです。
まとめ
「薬さえ処方してくれればそれでいい」というAGAや生活習慣病患者は立地がとても重要です。
でも、遠隔診療が始まり月1回通えば済むような時代に入ってきているので、AGAでさえ立地の重要性は低くなってきましたし、立地が重要なのはもはや医療脱毛くらいではないでしょうか。
その医療脱毛も、しっかりとしたWeb対策をしていれば場所が悪くても集患はちゃんとできます。唯一の例外は全国に何十店舗もクリニックを開いている超大手のみです。
別記事で解説しますが、多店舗展開とWebは相性が悪いです。Googleアルゴリズムの進化によってアフィリエイターが使えなくなってしまったので、GoogleやYahoo、あるいはFacebookなどのSNSに広告出すことでしか大手は集患できませんので、この記事の主張は多店舗展開のクリニックには当てはまりません。
でも、この記事を読んでいるあなたは多店舗展開している大手医療法人の関係者ではないはずなので、
- 自分の病院やクリニックにとってのボスはGoogleであるという意識を強く持つ
- 総合病院は地域のクリニック向けに情報発信
- クリニックは患者向けに情報発信
以上3点を意識した上で集患対策をしていくことが賢明です。